第30期竜王戦 挑戦者決定戦 第1局

藤井聡太くんの連勝記録や「ひふみん」効果による将棋ブームも一段落付いた感があるが、将棋ファンにとって非常に、非常に重要な対局が、お盆休み終盤、明日、8月14日に行われる。

すなわち、第30期竜王戦 挑戦者決定戦 第1局、羽生善治三冠 対 松尾歩八段 の対局である。

この対局がどれだけ重要かについて今日は書いてみたい。

将棋界には現在8つのタイトルがある。「タイトルって何?」という方もいらっしゃると思うが、要するにタイトルとは称号のことである。例えば「名人」というのはタイトルの一つで、現在、全将棋棋士の中でただ一人、佐藤天彦九段だけが、「佐藤名人」を名乗ることができるわけだ。羽生善治九段は、「棋聖」「王位」「王座」の3つのタイトルを持っているので、「羽生三冠」などと呼ばれたりする。

タイトルを手に入れるためにはどうすればいいかというと、1年間かけて行われる各タイトルのトーナメントやリーグ戦を勝ち抜き、さらに現在タイトルを持っている棋士と5番、あるいは7番勝負を行って、それに勝ち越すことが条件とされている。そうして前年度のタイトル保持者からタイトルを奪うことができるわけだ。

さらに、各タイトルには「永世称号」と呼ばれるものがある。これは各タイトルを一定回数以上獲得することで得られる、特別な称号のことだ。例えば「永世名人」などがこれにあたる。この永世称号は普通のタイトルと違い、奪われるということがない。一度永世称号の資格を得られれば、棋士を引退したとしても、永遠にその称号を名乗ることが許される(ただし基本的に永世称号を名乗るのは引退後である)。

ここで、羽生三冠の持っている永世称号について考えてみる。羽生三冠はなんと、現在ある8つのタイトルのうち「名人」「棋聖」「王位」「王座」「王将」「棋王」の6つの永世称号を持ち、さらにあと1回「竜王」のタイトルを取れば、「永世竜王」の資格を得ることができるのだ(ちなみに、最後の「叡王」のタイトルは今年できたばかりであり、永世称号どころか叡王のタイトルを持つ棋士もまだいない)。

羽生三冠はかつて、若かりし頃、7つのタイトルを同時に獲得したことで知られているが、7つの永世称号を獲得したとすれば、これもまた前代未聞、空前絶後のことである。藤井四段の連勝記録以上の大ニュースであり、国民栄誉賞も授与されるのではないかという噂もある(多分どこかにある)。

羽生三冠は以前、永世竜王のタイトルまであと一歩に近づいたことがある。それは今から9年前、渡辺明竜王に、当時の羽生名人が挑戦したときのことである。竜王戦7番勝負で羽生名人が3連勝、竜王奪取はほぼ確実と思われたが、その後なんと悪夢の4連敗を喫し、名人は破れたのである。

その2年後、羽生名人はまたも竜王戦において渡辺竜王に破れ、さらにその4年後、竜王戦決勝トーナメントの決勝戦まで勝ち進むも、若手の強豪糸谷哲郎六段に破れ、挑戦ならず。あと一歩のところで竜王のタイトルを掴み損ね続けているのである。将棋界の生きる伝説、羽生三冠にとって、竜王位、そして永世竜王の称号はまさに将棋人生をかけた悲願なのである。

そして今年、竜王位獲得の大きなチャンスが訪れた。竜王戦決勝トーナメントにおいて、今年名人戦に挑戦した強豪、稲葉陽八段を破り、3年ぶりに羽生三冠が決勝トーナメント決勝戦にコマを進めたのである。この松尾八段との三番勝負に勝ち越せば、永世竜王の資格を持つ渡辺明竜王とのタイトル戦に挑戦することができる。

対局の様子は、ニコニコ生放送で完全生中継されるようだ。 私はプレミアム会員なので、朝からPCに張り付く予定である(べつに私はニコ動の回し者ではない)。大注目、世紀の決戦だ。

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